今回の記事は、全編フィクションです!

村上「今回のゲストは、ロウリイズファーム社長、勝山田(かちやまだ)作冶さんです」

勝山田「どうも〜」

小池「ようこそお越しくださいました」

勝山田「いえいえ」

村上「あなた、今持っているのは……」

小池「そうなんですよ! ロウリイズファームのポーチです! 可愛いでしょう?」

(客席に披露する小池。ざわめき立つ客席)

勝山田「ありがとうございます」

村上「このポーチも、勝山田さんがデザインされたんですか?」

勝山田「いえいえ、これはうちの社員がデザインしたものです」

村上「そうですよね(笑)」

小池「勝山田さんは社長さんですからね!」


(しばしVTRが流れる)


村上「勝山田さん、今の話、本当ですか」

勝山田「はい。」

村上「本当に、ロウリイズファームを牧場だと思って入社したんですか?」

勝山田「はい、お恥ずかしながら(笑)」

小池「プロフィールに、『六本松農業高校を卒業』、とありますが……」

勝山田「はい、私は農業高校の出身で、専門は牛の搾乳でした」

村上「それがどうして、ファッション業界一位のロウリイズファームに入社を?」

勝山田「高校三年生の冬、うちの高校は東北のど田舎だったので、まわりはほとんど牧場や農園業に就職が決まっていたんです。で、勝山田だけ進路が決まってないぞ、どうするんだ、ってことになって(笑)。それで、担任が駆けづり回って、まだ採用を締め切ってない会社を探してきてくれたんです」

村上「それがロウリイズファームだった、と。」

小池「すごーい」

勝山田「はい。ただ、面接が東京だったんですね。それで、両親と『東京にも牧場があるんだね』なんていう話をして。担任の先生も、怪訝そうな顔をしていましたね。」

村上「それで、勤め始めるまで気付かなかったわけですか」

勝山田「はい。入社式の日に初めて出社したのですが、まず周りの新入社員が女性ばかりなわけですよ(笑)」

小池「そうですよね(笑)」

勝山田「ええ。でも、壇上には『ロウリイズファーム入社式』と書いてあるし、間違いないな、と思って。なんど辞書を引いても、『ファーム』のところには『農場』と書いてありましたから。」

村上「想像すると面白いですね(笑)」



―挫折の日々、そして搾乳の技術に見出した光明―


村上「そんないきさつで入社して、大変じゃなかったですか」

勝山田「そりゃあもう、大変でした。」

小池「それまでファッションに興味は……」

勝山田「そんなもの、全くなかったですよ。上京した時も、上下一着ずつしか持ってきてなかったですから。」

村上「一着ですか!」

小池「すごーい」

勝山田「ええ。高校までズック以外履いたことないような男でしたから、シャツとパーカーの区別もつかないんですよ。本当に、来る日も来る日も勉強の毎日でした。でも、そんなときも仲間に救われましたね。」

村上「同期の方に、ですか?」

勝山田「ええ。みんな、なぜか僕のことを面白がってくれたんですね。退社時間を過ぎたあとも、残って僕におしゃれのことを教えてくれたり。『こっちとこっち、どっちがポロシャツ?』なんて問題を出してくれて(笑) ありがたかったですね。」

村上「そんな勝山田さんですが、入社して三年はお店に立てなかったそうですね。」

勝山田「はい(笑)。まだ商品についての知識が無いのと、人前に出ると上がっちゃって、上手く接客できなくて(笑)」

小池「それでも、四年目に青山店の店長に抜擢されると……」

村上「一年後には、店舗の売り上げを倍増させて、上層部を驚かせたわけですか。これすごいですよね、一年で売り上げが二倍ですよ。」

小池「すごーい」

勝山田「それには、ちょっとした裏があるんです」

村上「裏、ですか」

勝山田「はい。実は私、高校時代に牛の搾乳を専門に勉強していたので、それで、『牛乳染め』というものを入社してからずっと、研究していたのですね。」

村上「牛乳で生地を染める、ということですか?」

勝山田「はい。」

小池「すごーい」

勝山田「それで、自分が店長になって、試作品だった牛乳染めのバッグを、自店舗だけなら販売していいよ、っていう許可を、上層部からいただきまして。」

村上「それが大ヒットした、というわけですね。」

勝山田「はい。」

小池「すごいですね。その後も続々とヒット商品を飛ばし、デザイナーとしても活躍されて……」

村上「なかなかいないですよね、間違って入社して、ここまで出世する人。今や社長ですからね(笑)」

【続く】